最高裁判所第二小法廷 昭和40(オ)158 判決
主 文
原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人夏秋武樹の上告理由第一点について。
上告人は、第一審以来、同人が訴外Dに対して有していた本件功労金等六七六、
六七五円の債権につき、昭和三四年三月末日右Dに代つて被上告人がE炭鉱を経営
することになつたので、同年一一月一七日上告人を含む炭鉱関係債権者の集つた席
上で、被上告人において債務引受をする旨確約したと主張し、これに対し、被上告
人は右事実を争つていることは、記録上明らかであるところ、原判決(第一審判決
理由引用)は、右上告人の主張事実を認めたうえ、昭和三六年頃訴外Fが被上告人
からさらに右炭鉱を引き継いで経営することになつた事実が認められるから、この
ように小規模経営にかかる事業主が二、三年の短期間内に転々交替する場合には、
事業によつて生じた債権関係は、特段の事情がないかぎり、当該事業を受け継いだ
経営者に包括的に承継されると解するのが相当であつて、上告人は現時の経営者に
対して請求するなら格別、被上告人に対して請求するのは失当であると判示して上
告人請求を排斥していることは論旨のとおりである。�
しかしながら、記録に徴すれば、右のように、昭和三六年頃Fが被上告人よりE
炭鉱の経営を引き継ぎ、同炭鉱に関する債務を引き受けたことの抗弁事実について
は、被上告人においてなんら主張していないことが認められるので、原審には当事
者の主張しない事実を認定してこれに基づいて判決した違法があるというべく、右
違法は原判決の結論に影響を及ぼすこともまた明らかである。されば、論旨は理由
があることに帰し、原判決は他の論旨についての判断をまつまでもなく破棄を免れ
ない。そして、本件は、なお審理を要するものと認めるから、原審に差し戻すこと
を相当とする。
- 1 -
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す
る。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
- 2 -